SPECIES COMPARISON
似ている2種を、写真で見比べる。
ボニンハナダイとフチドリハナダイは、全体的な色合いがよく似ています。特に幼魚は分かりにくく、伊豆大島で見つかったボニンハナダイの幼魚も、最初はフチドリハナダイだと思われていたそうです。
成魚のオスなら腹びれなどに分かりやすい違いがありますが、幼魚やメス、成長途中となると、正直まだ迷うところもあります。撮影した写真を並べながら、見分けるときに見ている部分をまとめてみました。少しでも見分ける手がかりになればと思います。
01
成魚のオスは、まず腹びれの色を見る
成魚のオスで最初に見るのは、腹びれと尾びれの色です。撮影したボニンハナダイは、まっ黄色な腹びれと尾びれが印象的。フチドリハナダイは、腹びれの朱色の縁取りや、おなか側に入るオレンジ〜朱色のラインが目に入ります。
比較しやすいよう、ボニンハナダイの写真を左右反転しています。別個体・別条件で撮影した写真です。
このフチドリハナダイは、逆さまではない、鰭が全開、しかもトリミングなし。個人的には完璧な1枚です笑。バシッとこの写真が撮れたときは、本当に気持ちよかったです。
フチドリハナダイの尾びれは、紫色からオレンジ、朱色まで、単色に見えるものもグラデーションに見えるものもあります。色の違いを見るのは面白いですが、尾びれだけで決めてしまわないようにしたいところです。
資料では、背びれの前側にも違いがある
ボニンハナダイの原記載にある成魚オスの比較では、腹びれはボニンが鮮やかな黄色、フチドリが鮮やかな赤色で、フチドリには付け根に淡い青色の部分があります。背びれの前側も、ボニンは緑がかった黄色、フチドリはオレンジがかった赤色とされています。
ただし、同じ資料には、ボニンハナダイの尾びれが紫色になる例も記載されています。また、体側のオレンジ〜赤色の帯は両種にあります。『尾びれが黄色いか』『朱色の線があるか』だけでは決められず、ここに載せた写真の印象と違う場合もありそうです。成魚のオスを見分ける際には、腹びれと背びれの前側の配色も判断の手がかりになります。
参考:Gill, A.C., Tea, Y.-K. & Senou, H. (2017), Pseudanthias tequila, a new species of anthiadine serranid from the Ogasawara and Mariana Islands. Zootaxa 4341(1):67–76. © 2017 Magnolia Press. CC BY 3.0。本文の一部を日本語に翻訳し、要約・再構成しています。
02
幼魚は、頭の黄色い範囲を見比べる
幼魚は成魚のオス以上に似ています。見ているのは、頭の黄色い部分がどこまで広がっているかと、その濃さです。
ボニンハナダイは伊豆大島で撮影した幼魚。別個体・別条件の写真で、黄色の範囲や見え方を比べています。
このボニンハナダイは、頭のてっぺん辺りから口の下ぐらいまで、濃い黄色に見えます。尾びれの黄色も付け根で終わらず、少し体に食い込んでいるように見えるので、その部分も手がかりにしています。
一方のフチドリハナダイは、頭のてっぺんまでは黄色くならず、目の上から口の辺りに淡い黄色が入る印象です。ただ、この違いは撮ってきた個体を見比べて感じていることなので、幼魚を必ず見分けられる決め手とまでは言えません。
フチドリハナダイとベニハナダイの幼魚も似ている
さらに迷うのが、ベニハナダイの幼魚です。この小さなフチドリハナダイも、頭の部分に黄色があることを手がかりに判断しています。


別の個体・撮影条件による比較です。
頭の黄色に加えて、体全体の色の淡さも見ています。幼魚の色の濃さは、ボニンハナダイ、フチドリハナダイ、ベニハナダイの順に薄くなるような感じで見比べていますが、本当に微妙なラインです・・・笑。写真の明るさや光の当たり方も違うので、色の濃さだけで判断するのは難しいですね。
03
メスや成長途中は、まだ判断に迷う
幼魚から成魚のメスにかけては、どちらもかなり分かりにくいと感じています。オスは両種とも背びれの第3棘が長く伸びますが、これは2種に共通する特徴です。
成長するにつれて、先に背びれが伸び、その後で腹びれや尾びれの色が変わるのかな、と考えています。ただ、この変化の順番までは、まだはっきり分かっていません。

この写真はフチドリハナダイの性転換途中のオスとして載せていましたが、尾びれが黄色いので、もしかするとボニンハナダイかもしれません・・・。ただ、尾びれだけでは決められないので、ここではどちらとも断定せずに残しておきます。

こちらも、下側に写っている個体はボニンハナダイな気がします。こうして写真を見返しても迷うことがあるので、周りにいる魚も含めて、もう少しよく観察したいところです。
04
フチドリハナダイの婚姻色は、体全体の色合いが変わる
婚姻色を見るときは、体全体の色合いの変化が一番の手がかりです。普段のオスの写真と比べると、かなり印象が違います。
比較しやすいよう、オスの写真を左右反転しています。同じ個体かどうかは未確認で、撮影角度や写る大きさも異なります。
この婚姻色は、スミレナガハナダイを思わせるような、マットな紫とオレンジ〜朱色の組み合わせ。いつものフチドリハナダイとは違った美しさがあります。

婚姻色でも、こちらの写真のように朱色〜オレンジが強く出ることもあります。腹びれに黄色が入ることもありますが、婚姻色によるものなのか、個体差なのかは、ちょっと微妙なところです・・・。
ボニンハナダイの婚姻色は、まだ確認できていません。フチドリハナダイの産卵行動と合わせて、いつかちゃんと見てみたいです。
05
いる場所も似ていて、撮影はなかなか難しい
幼魚なら伊豆大島で見られることもある2種ですが、ボニンハナダイは相当稀だと感じています。ボニンは名前のとおり小笠原の魚という印象が強いものの、与論島でも撮影しています。小笠原にはまだ行ったことがないので、現地でどんなふうに泳いでいるのかも気になります。
見かけた水深も似ていて、居場所は岩陰や隙間、オーバーハングが多い印象です。久米島のウーマガイなどでは、逆さまになったり、岩の隙間を縦に泳いでいたりするので、撮りにくいです。


久米島とフィリピンで撮影した個体。場所も撮影条件も異なる写真です。
同じフチドリハナダイでも、久米島ではいつもより淡く見える個体がいました。場所によって見える印象も違って面白いですが、個体や撮影条件も違うので、環境だけが理由なのかは分かりません。
ボニンハナダイには、普通の向きで泳いでいる神ポイントもありました。フチドリハナダイも、某ポイントでは逆さまではない姿を撮れています。どうしてもその姿を見たい方は、そんなリクエストをしてみるのもありかもしれません。ガイドしてくれるかは知りません笑。
この記事の写真も、向きをそろえた比較以外は、撮影したときの向きのまま載せています。逆さまに写っていても、写真を上下逆にしたわけではありません。
天井から落ちてくる浮遊物がつらい
オーバーハングで困るのが、吐いた泡が天井に当たり、付いていたゴミがパラパラと落ちてくることです。これが最悪で、一度こうなると泥地を巻き上げたときのようになかなか収まらず、写真にも大きく影響します。

魚の向きがよくても、今度は浮遊物が気になる。思ったように撮らせてくれない魚たちです笑。
06
頭と鰭の色を入口に、いくつかの部分を見比べる
最初に目がいくのは、頭の色、腹びれの色、尾びれの色。それから体の模様を見ています。成魚のオスは腹びれの配色が手がかりになりますが、尾びれの黄色や体の朱色の線だけで決められるわけではありません。
幼魚やメス、成長途中は、まだ自信を持って見分けられないこともあります。分からないところも含めて写真を残し、また出会ったときに見比べていきたいです。
どちらも非常に美しい色合いのハナダイなので、ぜひ一度は見ていただきたいです。腹びれや尾びれまで見られると、その違いもいっそう楽しめると思います。






