GEAR & IDEAS / 道具と工夫
ピントは合っている。
でも、なんだか「う~ん」。
被写体を「綺麗に」撮影できているはずなのに、イマイチ「う~ん」となるときってありませんか?
ネットで見かける写真は、同じ被写体なのに、なぜか「あっ、いいな」と感じる。手元の写真も、目にしっかりピントが合っていて、全体がぼやけているわけでもない。それなのに、何が違うんだろうと思うことがありますよね。
その理由はいくつかあると思いますが、被写体がその写真の「主役」になりきっていないことも、大きな要素だと感じています。
今回は、水中写真の「いまひとつ」を減らすために、撮る位置やアングルを見直す話を書いてみます。
陸上写真のプロでも、水中写真のプロでもありません。あくまで、趣味で撮っているアマチュアの意見として読んでいただければと思います。

01 / PHOTO & PERSPECTIVE
無意識に「上から」撮っていないか
一眼を持って潜るようになって変わったことでも書きましたが、水中は陸上とは撮影の勝手が違います。アングルまで意識が回らなかったり、分かっていても思うように動けなかったりすることがあります。
その上で注目したいのが、「いつも同じ方向から被写体を撮影していないか?」ということです。
マクロの被写体を探していると、自分が泳いでいる位置から魚を「見下ろす」場面が多々あると思います。海底にいる魚だけでなく、泳いでいる魚でも、そういう場面はありますよね。
見つけた位置からそのままカメラを構えれば、当たり前ですが、写真も上から撮ったものになります。
まずは、この2枚のキシマハナダイを見比べてみてください。


最初の写真は背中側の模様がよく見えて、次の写真は体側やヒレの形が見えます。同じキシマハナダイでも、だいぶ印象が違いませんか?
ここから載せる作例は、同じ条件で撮り比べたものではありません。高さや向きに加えて、距離や背景なども違うので、アングルだけを変えた比較ではなく、見え方の例として見てください。
人は、見慣れない景色や写真に惹かれるところがあると思います。産卵シーンや、なかなか出会えない大型生物の写真を見て、「この写真、なんかいいな~」と感じるのも、その一つかもしれません。
同じように、見慣れない「視点(アングル)」にも惹かれるのだと思います。珍しい場面や生物でなくても、いつも見下ろしている魚を同じ目線や少し下から撮るだけで、普段とは違う姿を見せられます。
今度ネットで「いいな~」と思う写真を見つけたら、アングルにも注目してみてください。被写体と同じ目線だったり、少し下から見上げていたりしませんか?
02 / PHOTO & PERSPECTIVE
犬や猫を撮るように、魚の目線へ
このアングルの話は、陸上でも同じです。例えばスマホで犬や猫を撮るとき、しゃがんで相手と同じ目線になって撮ることがありますよね。


別の猫・場所で撮った写真ですが、目線の高さを変えるイメージはこんな感じです。
水中でも、まずはカメラを魚の目の高さまで下げてみる。いつも見下ろしていた被写体なら、それだけでも普段とは違う絵になると思います。
小さなホテイウオの稚魚も、目線で変わる
ホテイウオの稚魚だと、こんな感じです。最初の写真も極端な見下ろしには見えないかもしれませんが、この大きさの魚からすると、結構上からのアングルで撮っています。


同じ目線から撮った方は、目や口がこちらに向いて、顔つきが見えやすいですよね。なお、この2枚は別の個体で、付いている海藻も違います。
少し下から撮ると、また違う印象に
ただ、きっかり同じ高さに合わせなければならないわけではありません。少し上から、同じ目線から、少し下から。魚の見え方に合わせて選べばいいと思います。


先ほどの真横から撮った写真と、少し下から顔側を狙った写真です。下からの方は顔や腹側が見えて、横姿とはまた違う印象になります。
顔側から撮ると、表情に目が向く
こちらは、魚と同じ高さから撮っています。ただ、横姿を撮ったものではなく、顔側から狙った写真です。

撮る高さだけでなく、横から見るのか、顔側から見るのかでも、イメージは違いますよね。横姿では体側の模様やヒレが目に入り、顔側からだと表情に目が向きます。
低ければ低いほどいい、ということでもありません。大事なのは、いつもの位置で構える前に、どこから撮ろうかと一度考えてみることです。
03 / PHOTO & PERSPECTIVE
目線をそろえたら、背景を選ぶ
目線をそろえることが身に付いたら、次は背景選びを考えてみると、写真のランクがまた一つ上がると思います。
先ほどのキシマハナダイの横姿は、魚の後ろにも色や形が入って、背景が少しごちゃっとしています。
黒抜き写真が好きなので、背景に余計なものが写らないように、位置を調整して撮影しています。もちろん、黒抜きにはカメラやストロボの設定も関係します。背景だけで決まるわけではありません。

ある意味、これも背景選びの一つですね笑。
メジャーなところだと、背景にカラフルなソフトコーラルを入れる撮り方もあります。被写体との目線だけでなく、後ろに何を入れるかも意識すると、また少し雰囲気が変わりますよね。
スミレナガハナダイの幼魚は、ソフトコーラルを背景に
こちらのスミレナガハナダイの幼魚は、背景のソフトコーラルを意識して撮影しています。


最初の写真はピンクの背景に黄色い魚が大きく写っていて、目や顔に視線が向きます。次の写真では岩肌や暗い隙間も目立ち、周囲の様子がよく分かります。魚の写る大きさや明るさも違いますが、背景の入り方によっても印象が変わりますよね。
イシガキカエルウオは、高さ・距離・背景を変えて
イシガキカエルウオも、最初の写真は少し上から撮影しています。次の写真は魚と同じ高さに合わせて、背景や被写体との距離も変えたものです。


周囲まで見える写真と、顔が大きく写って背景がぼけた写真。印象はかなり違いますよね。
タテジマヘビギンポは、背景の彩りも入れる
こちらのタテジマヘビギンポは、最初の写真だと周囲の色や模様が多く、少しごちゃっとしています。次の写真では、背景を考えて撮影しました。


鮮やかなピンク色や、その奥の青い空間が入ると、雰囲気も変わりますよね。黒抜きにする以外にも、背景の色を生かす楽しみ方があります。
このあたりは本当に好みです。カラフルな写真が好き、とか、いろいろな要素が入ってくるので、まずはおまけ程度に考えてください。
その中でも、主役の輪郭が背景の色や明るさ、模様に埋もれていないかは見ておきたいところです。
背景を単純にするだけが正解ではなく、周囲の環境を写すことで、その生物がどんな場所に暮らしているのかを伝えられることもあります。
04 / PHOTO & PERSPECTIVE
上から撮るほうが伝わるものもある
背中の模様を見せたいときや、ヒラメ、カレイ、エイなどの平たい体を写したいときは、上から撮るほうが伝わりやすいこともあります。
例えば、ホウボウの幼魚。上から撮ると、広がった胸鰭の青い縁取りや模様がよく見えます。

なので、上から撮るのがダメということは一切ありません。何を見せたいかによって、選ぶアングルは変わります。
この記事で見直したいのは、意図せず、いつも同じように上から撮ってしまうことです。狙いがあって上から撮ることとは、分けて考えたいですね。
05 / PHOTO & PERSPECTIVE
無理に目線を下げない
撮りたいアングルがあっても、物理的にカメラを下げられないこともあります。
例えばサンゴをすみかにする生物を撮るとき。その一帯にサンゴが密集していると、無理にカメラを下げることで、サンゴを折ってしまう可能性があります。

海底やサンゴに触れず、安定して位置を保てる範囲で撮影しましょう。砂を巻き上げたり、魚を追い詰めたり、動かして構図をつくったりしないことも大切です。
安全な位置を取れなければ、その構図は見送る。周囲やバディ、現地のルールを優先していただければと思います。
06 / PHOTO & PERSPECTIVE
まずは楽しく、一つずつ試してみる
ここまでつらつらと書きましたが、前提として、写真の撮り方に正解はありません。
たかだか趣味なので、好きなように撮影して、好きなように楽しめばいいんです。ここが本当に重要です。
ピントが合っていなくても、見下ろすアングルで撮っていたとしても、それで満足していれば、写真の楽しみ方としては何の問題もありません。
その上で、もう少し「満足度を上げたい」という気持ちが芽生えたら、まずは無理のない範囲で、カメラを被写体の目の高さまで下げてみましょう。普段とは違う絵になると思います。
慣れてきたら、次は背景を考えてみようとか、カメラの設定をいじってみようとか、次の段階へ進んでみる。
設定も撮り方も、一気に何もかも変えようとすると、何を変えたことで写真がこうなったのか、分かりにくくなってしまいます。
一つずつゆっくり確かめて、理解していくことが第一歩だと思います。
何事も過程が一番楽しいので、自分の軸を持っている人は、それを貫き通すのもそれでいいと思います。
