ANTHIAS / COURTSHIP COLORS
いつもの魚が、
こんなに変わる。
6種の普段の姿と婚姻色。
何度も潜って、撮りたくなる一瞬を。

同じ魚なのに、こんなに色が変わるんだ。婚姻色を見ていて楽しいのは、まずそこです。
普段より鮮やかになったり、ヒレを大きく広げたり。次の世代につなぐためにアピールする姿は、生命の煌めきそのものだと思っています。
「そんなに同じところばかり潜って、何をしているの?」と聞かれることもあります。もちろん狙いたい魚が出ていることもありますが、婚姻色や産卵の一瞬を撮りたくて、何度も同じ場所に通っています笑
今回は、そんなハナダイ・ハナゴイの中から6種。普段のオスの姿と婚姻色を見比べながら、撮っていて感じたことも書いてみようと思います。
普段の姿を知ると、もっと楽しい
婚姻色は、繁殖に関わる場面で現れる体色のこと。ハナダイの仲間では、求愛や産卵に伴ってオスの色が鮮やかになる例が知られています。普段の色を知っていると、変わったときの驚きも大きいんですよね。
見ていて、色が変わるのは本当に一瞬だと感じます。ただ、婚姻色が出たからといって、目の前ですぐ産卵してくれるとは限りません。その話は、後ほどハナゴイのところでも・・・。
ここでは通常時の成魚のオスと、婚姻色として撮影した姿を比較しています。同じ個体の連続写真ではなく、撮影条件も異なります。向きをそろえるため、一部は左右反転しています。
01 / アカオビハナダイ
アカオビハナダイ|まずはこの変化から
Pseudanthias rubrizonatus
通常時のオス

婚姻色のオス

アカオビハナダイの婚姻色は、変化が分かりやすいですね。今回の写真では、赤い帯より尾側の黄色がぐっと目立っています。
これまで伊豆で撮ってきた中では、婚姻色を狙いやすい魚だと感じています。色だけなら真昼間にも見られるし、まとまっている場所も多い。ハナダイの婚姻色を撮ってみたいなら、まずはこの魚から、という気持ちです。
産卵の瞬間を撮る
産卵の写真①

産卵の写真②

産卵の写真②では、卵もしっかり写っています。
産卵も、ほかのハナダイに比べると撮りやすいと思っています。事前の動作が分かりやすく、産卵の動きに入ってからも少し猶予があるので、肉眼で気付いてから撮影が間に合うことがあります。
キンギョハナダイやカシワハナダイ、ケラマハナダイなんかは、動き始めてからが爆速だったりします。体も小さいので、ちゃんと写真に残すのは難しめですね・・・。色を撮るのと、産卵の一瞬を撮るのでは、また別の面白さがあります。
02 / ケラマハナダイ
ケラマハナダイ|白っぽい体が山吹色に
Pseudanthias hypselosoma
通常時のオス

婚姻色のオス

普段は白っぽく見える体が、婚姻色では山吹色に染まります。色の塗り分けがカシワハナダイっぽく見えて、水中で「あ、カシワハナダイか?」となることもあります笑
背鰭の赤い模様は、今回の婚姻色の写真でも残っています。普段の写真と、体全体の色だけでなく背鰭も見比べてみてください。
普段の色合いからがらっと変わるので、これも見ていて楽しい種類です。写真の体側には黒い点も見えますが、婚姻色の目印としているわけではなく、この個体の特徴だと考えています。
03 / シロオビハナダイ
シロオビハナダイ|何度でも撮りたい、赤・青・白
Pseudanthias leucozonus
通常時のオス

婚姻色のオス

大好きなシロオビハナダイです。名前のとおり、体の真ん中には白い帯。通常時でも尾鰭の青っぽい色が美しく、長く伸びる先端も可憐です。
それが婚姻色になると、白い帯より尾側の体が真っ赤に染まります。オレンジ色だった体が赤くなり、ヒレの青と帯の白も合わさって、赤・青・白のトリコロールに。これが最高に綺麗なんですよね。
ハナダイの中でも随一の美しさだと思っています。通常時も婚姻色も、すでにしっかり撮った写真はあるのに、出会うと何度でも撮りたくなります笑
冷めかけの色も見てみる

こちらは婚姻色が冷めかけたときの写真です。強く赤く染まった姿と比べると、体の後半の印象がまた違いますね。
色が出るときは一瞬ですが、冷めるときは少し緩やかに感じます。いつもの色に戻っていく途中まで見ていると、同じ魚を撮り続けたくなる理由がまた増えます。
04 / スミレナガハナダイ
スミレナガハナダイ|マットな色と、歌舞伎みたいな顔
Pseudanthias pleurotaenia
通常時のオス

婚姻色のオス

ほかの種類のビビッドな色と比べると、スミレナガハナダイはパステルカラーなハナダイです。普段はピンクと紫が中心で、目に優しい色ですね笑
婚姻色になると、マットな質感の色に見えます。顔の模様も相まって、なんだか歌舞伎みたいな感じがします笑
あとは、背鰭を開いてくれない・・・。これまで婚姻色を見る機会は結構ありましたが、その状態で背鰭を開いた姿はまだ一度も見たことがありません。
今回の写真もそうですが、色は出ているのに背鰭は閉じたまま。いつか色もヒレも、という一枚を撮りたいですね。
05 / ハナゴイ
ハナゴイ|推しメンを見つけたくなる婚姻色
Mirolabrichthys pascalus
通常時のオス

婚姻色のオス

普段の紫色も綺麗ですが、婚姻色では背鰭の後ろの赤がぐっと強くなり、尾鰭が黄色く見える個体もいます。ほかのハナダイ・ハナゴイとは、また違う色の出方だと感じます。
今回の婚姻色の写真を見比べても、色の出方が全然違いますね。個体による違いを楽しんでいますが、写真ごとの色の強さや撮影条件も同じではありません。

胸鰭の黄色い斑点まで目立つような姿を見ると、「本気カラーだ!」と思って見ています。これは私なりの呼び方ですが、細かいところまで見たくなる魚ですね。
上の比較写真で背鰭が真っ赤になっている個体は、特にお気に入りの推しメンでした。ずっと撮影していたのに、一向に産卵してくれませんでした。悲しい・・・。
赤い模様が『鬼滅の刃』の竈門炭治郎の頭の痣に似て見えて、勝手に「炭治郎ハナゴイ」と呼んでいました笑。見比べていると、お気に入りを見つけたくなりますね。
06 / フタイロハナゴイ
フタイロハナゴイ|白くなる体と、ぼんぼり
Nemanthias bicolor
通常時のオス

婚姻色のオス

最近は伊豆でもオスを見かけるようになりました。オスの背鰭には、ぼんぼりが付いているんですよね。第2・第3棘が長く伸びていて、ヒレを広げるとよく分かります。普段は目立たないこともありますが、通常時の写真にも写っています。
婚姻色の写真では、オレンジ色と薄紫だった組み合わせが、オレンジ色と白に変わっています。背鰭には赤が入り、腹鰭や尻鰭の一部にも赤が見えます。
そして、ぼんぼりを広げたこの姿。可愛すぎます笑
ただ、この状態を見るのはなかなか大変です。少なくとも伊豆では、まだこの婚姻色を見られていません。オスもメスもいて、毎年増えていると感じる場所もあるので、そこで産卵しているのではと期待していますが、実際の産卵はまだ未確認です。
夕方に粘れば見られるのかな・・・。同じ魚に会えても、撮りたい姿に出会えるとは限らない。そこが難しくも楽しいところです。
だから、同じ海に何度も潜る
尾側が黄色くなるアカオビ、赤・青・白が鮮やかなシロオビ、マットな印象のスミレ、そしてぼんぼり付きのフタイロ。同じ婚姻色でも、変わり方はそれぞれです。
色だけを撮るなら狙いやすい魚もいれば、何度通っても見られない姿もあります。産卵まで写真に残そうと思うと、さらに難しくなる。その一瞬のために頑張るのも含めて、楽しいんですよね。
まずは普段の姿を覚えて、いつも見ている魚をもう少し眺めてみてください。「あれ、今日は違うぞ?」と思える瞬間があるかもしれません。だから、同じところに何度も潜るんです笑
